ニューヨークにミートアップの季節が帰ってきました(後編)

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前編では9月になって再開されたミートアップをいくつかご紹介しました。テクノロジーのレベルとしては、シリコンバレーほど尖っていませんが、さまざまな分野のスタートアップがニューヨークに本拠を構え、また訪れてくるのがよく分かります。

前回の東欧のスタートアップ向けアクセラレーターStarta Acceleratorのデモデーとは少し趣向が異なり、カナダのアクセラレーター「Canadian Technology Accelerators」のデモデーは、朝9時から行われました。

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カナダのニューヨーク総領事館主催の朝食会。目玉はアクセラレーター参加スタートアップによるデモデー

カナダのテクノロジー・スタートアップが集結

まずはカナダのニューヨーク総領事であるPhyllis Yaffe氏からのスピーチ。「私のころのテクノロジーといえば司書の資格で、いまのテクノロジーは分からない」と冗談を飛ばしながら会場をなごませていました。

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総領事(右)が登場すると、来場者はそれまでの朝のネットワーキングのおしゃべりを止めて注目

その後は本日の主役である参加スタートアップが相次いでピッチ。スクリーンがないためスライドを使えないためか、最初の何人かのスピーカーはかなり緊張している様子が伺えました。また、何人かの登壇者はフランス語アクセントがあり、ケベック州を本拠にしたスタートアップであることがすぐに分かりました。

別件でスマートアパレル(ウェアラブルの進化系で、衣料品にさまざまな電子的機能を載せたもの)について調べている際に、ケベック州に本拠地を構えるスタートアップがいくつもあったことを思い出しました。一昨年にモントリオール(ケベック州)にいったときにも、多くの大学があり、英語と仏語のバイリンガルが、フランス語圏と米国の間でビジネスをしているのでしょうか。

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毎月、朝食用のオーツを2箱届ける「OatBox」。ケベック州モントリオールの材料を使っている

個人的に面白いと思ったのは、ユニフォームのマーケットプレイスを手がける「La Gioia Uniforms」。レストランなどで使う「ユニフォーム(制服)」を、ニューヨークのデザイナーがデザインし、アジアの縫製工場で作るモデル。創業者のWilliam Lechuga氏はタイなどアジア諸国での経験を生かして起業したが、本社はカナダのノバスコシア州に置き、ニューヨークとの間を行き来するとのこと。「ノバスコシア州の支援を受けられるし、そもそもシステムを作るためのエンジニアリング費用が半額近くに下げられる」(同氏)。

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ニューヨークのデザイナーが作る独自のユニフォームを提案するLa Gioia Uniforms

ファッションと技術の融合

その後の1週間ほどは、自分の予定が忙しくてミートアップにいけない日々が続きました。ほぼ毎日のようにミートアップやビジネス向けのネットワーキングパーティがあり、中には直前に決まるものもあるため、「行きたかったのに行けなかった」ということも少なくありません。イベントが多い火曜と木曜は、なるべく夜の予定は空けておくようしています。

1週間ぶりに参加したミートアップは、「ファッション」と「プログラム(コード)」をテーマとした「Stitching together Code + Fabric: What's Next in Fashion Tech」。ファッションの街、ニューヨークならではのミートアップです。「ファッションと技術は、もっと歩み寄ることができるはず。だが生活している環境や普段使う用語が違うことなど、なかなか連携が進んでいない。それでもニューヨークはロンドンと並んで、技術とファッションがもっとも触れ合う場所」(デザイナーのSylvia Heisel氏)。

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初期の3Dプリンターを使った服は「着られたものじゃなかった」
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でも今では素材(NinjaFlexなど)の進化で普通に着られるとか。原材料費も20ドル。問題は「一着作るのにとてつもない時間がかかる」

このミートアップは参加者のパネルディスカッション形式の前半と、お酒や食べ物をつまみながらのネットワーキングで構成されていました。「3Dプリンターを使って洋服を作っている。今までは汎用(MakerBot)の3Dプリンターを使ってきたが、できるまでの時間が膨大で量産できない。しかたがないので衣料制作専用の巨大な3Dプリンターを製作している」(Heisel氏)など、ふだんは聞けないような3Dプリンターの活用について、いろいろとお話を伺えました。

また2人目のパネリストであるAnnelie Koller氏は、布地などを裁断して作る従来の衣料品はムダになる部分が多いが、3Dプリンターのように素材を足していく作り方は、原材料の無駄をゼロに近づけることができ、とてもエコロジーな方法として注目しているとのこと。「皮革で時計のリストバンドを作る際に、無駄になる部分は80%。最新の技術を使うことで、ファッションを考え直すことができる」(Modern MeadowのAnnelie Koller氏)とファッションと技術の融合に高い期待を寄せていました。

彼女はバイオテクノロジーを使った皮革メーカーModern Meadow社の上級デザイン研究員。ブルックリンに本社を置くModern Meadow社は、本物の皮革の成分を培養して人工的に皮革を作る技術が注目を浴び、すでに5000万ドル以上の資金を調達しています。

生き物をを殺すことなく動物由来の製品を作る「Biofabrication」@TED

このミートアップでは、今年の7月〜8月に京都で開催した「Monozukuri Bootcamp」に参加した、FlexTraPowerのチーフデザイナー、Thuy Pham氏も参加しており、シード期以前の資金調達をどのようにやっていくべきか積極的に質問を投げかけていました。Koller氏は「素材に関する多くの技術は、国防のための研究開発費によって進められることがほとんど。ニューヨークでもさまざまな補助金が用意されているので、積極的に活用するべき」と説明していました。

後半のネットワーキングでは、高校を卒業したばかりながら、この秋からMIT Media Labに参加予定の長谷川陸央さんとお会いし、米国での印象やMedia Labへの期待など、いろいろとお話をすることができました(2016年のIPA未踏プロジェクトに選ばれたように農業に高い関心をお持ちとのこと)。

ビッグデータとAiの「Data Driven NYC」

前編で取り上げたミートアップ「Hardwired NYC」を主催する地元VC、FirstMark CapitalMatt Turck氏が主催するもう一つのミートアップが、ビッグデータやAIを取り上げるミートアップ「Data Driven NYC」です。

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Matt Turck氏は、こちらのミートアップでも司会を務めます

Hardwiredに比べて、Data Drivenの方が関連する業界も大きいということもあり、ミートアップの規模も大きいのですが、この日は本当に大きめの会場で、「仕事帰りに集まる無料の集まり(ミートアップ)」とは多少、趣を異にしていたと言えるかもしれません。

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一列、ゴッソリ空いているのは、パネルディスカッションの登壇者の席です。
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ここまで大きな会場でミートアップを実施する技術系ミートアップは、NY Tech Meetupなど一握り

日本ではあまり取り上げられないスタートアップですが、頼んだ品物を代わりにスーパーで買って指定の場所まで届けてくれる「Instacart」や、日本でも知名度があるスマートフォンを使った配車サービス「Uber」などの注目のネット企業のシステムの裏側を、その責任者が次々と説明してくれました。

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Instacartデータサイエンス担当VPのJeremy Stanley氏

こうしたネット技術を活用した多くの企業がシリコンバレーの企業ですが、ニューヨークでは商談や展示会などが多く、こうした企業の幹部が来る機会を生かして、ミートアップなどで講演してもらうことが少なくありません。シリコンバレーほどではありませんが、最新のテクノロジーに詳しい人たちの話を聞けるミートアップが数多くあるのも、ニューヨークの街としての魅力かもしれません。

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企業向けメッセージシステム「Slack」の検索・学習・知性担当部門長のNoah Weiss氏。彼の部門はニューヨークに設立されたばかり

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ミートアップの後半は、西海岸から来ていた4人のVC投資家によるパネルディスカッションも行われました

他にも、毎週金曜の朝に創業者やVCが1時間ほどカジュアルに話す「Founders Friday」など、多くのミートアップが生活に溶け込んでいます。こうした20〜30人程度の小規模の集まりについては、また別の機会にご紹介します。


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