FabFoundryアクセラレーターをニューヨークで始める理由

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前回のエントリー(FabCafeを核に起業の促進と成長機会を提供するFabFoundry)から間があいてしまいましたが、今回はなぜ日本人である私が始めるシード・アクセラレーター(FabFoundry)にとってニューヨークという場所が適しているのか、そしてFabFoundryがどのように日本とニューヨークの架け橋になろうとしているのかをご説明します。

FabFoundryは、次のようなコンセプトを実現するためにスタートしました。


  • デジタル技術を活用したモノづくり(「デジタル・ファブリケーション」)にフォーカスする

  • モノづくりへの興味・関心を持つデザイナーや起業家たちが「ヒト・モノ・カネ」にアクセスできる「場」を提供する

  • ウェブに続く、次世代の産業とライフスタイルを主導する

3Dプリンタを代表とするデジタル・ファブリケーションが、今後のモノづくりを根底から変えてしまう可能性を秘めていることは前の記事でご説明しています。ここで必ず聞かれるのが「どうしてニューヨーク? なぜシリコンバレーではないの?」ということです。

NY Startup Logos.jpg
(これらのロゴはニューヨークに本社を置く著名なスタートアップ企業の一部)

ニューヨークでスタートアップ・アクセラレーターを始める理由はいくつもありますが、次の4つが大きな理由です。

  1. ニューヨークのスタートアップ・シーン(VC投資)がこの10年で急成長している
  2. アート・デザインの世界一の都市であるニューヨークは、モノづくりの街として最適である
  3. ニューヨーク在住の日本人が減っている
  4. ニューヨークには人口に比してスタートアップ・アクセラレーターが少ない

日本人ビジネスパーソンが減っているニューヨーク

特に3番目の「ニューヨークにいる日本人が減っている」というのは、日本にいると気づかないかもしれません。しかし外務省が毎年調査している海外在留邦人数調査統計の数字を追うと、ここ数年、顕著に減っています。シリコンバレーを擁するサンフランシスコのトレンドと重ねた以下のグラフをみると、その傾向の差は明らかです。 Japanese in NY vs SF.jpg

詳しくデータを分析すると、永住者の数はニューヨーク、サンフランシスコともに増加傾向なのですが、長期滞在者(駐在員など)の数がニューヨークではこの8年間で約15パーセントも減少しています(サンフランシスコでは微増)。

日系企業向けにサービスを営むある企業の経営者の方にお尋ねしたところ、確かに日本企業がニューヨークに送る駐在員の数はかなり減ってきているとのことです。

つまり、日本人である私にとっては、日本人同士での競争が減っており、日本人としての強みを活かしやすい環境にあると言えます。

ニューヨークのスタートアップは急増

もちろん市場そのものが縮小していて、その結果として人が減っているのであれば、このような仮説は成り立ちません。

しかし実際には、ニューヨークにおけるVC投資は、ここ数年、とても活況を呈しており、この8年でニューヨークにおけるVC投資件数は1.6倍以上になっています(グラフにはありませんが、投資額は2.2倍以上)。投資の絶対数や絶対額はサンフランシスコ地域(シリコンバレー)がいまだに圧倒的なのですが、ニューヨークはシリコンバレー、ボストン地域に次いで3番目のVC投資規模を誇っています。
VC Investment in NY vs SF.jpg

このトレンドを裏付けるように、ここ数年、ニューヨークには1か月単位で借りることができる共有オフィスの一種であるコワーキングスペースが急成長しており、業界最大手のWeWork社は先週、4億ドル(約500億円)の資金調達を実施するなど、競争が激化しています。

つまりニューヨークは全米でも屈指の大都市圏(約2360万人)に恥じないスタートアップ環境に成長しているわけです(シリコンバレー圏の人口は約860万人)。

ところが、VC業界でこの10年の一番のトレンド(というより発明!?)である「スタートアップ・アクセラレーター(シード・アクセラレーター)」は、実はニューヨークにはあまり多く存在しません。シード・アクセラレーターに関する統計データを集めているSeed-DBの数字をもとに調べてみると、シリコンバレー地域には人口100万人あたり2.79個のアクセラレーターが存在しているのに対して、ニューヨークには人口100万人あたり、たったの0.55個。これは全米平均である0.49とほぼ同じレベルです。
Accelerator NY vs SF.png

つまりスタートアップは続々と登場しているものの、スタートアップを育てる環境としては、ニューヨークはまだまだ発展途上であると言えます。

日本企業や日本人ビジネスパーソンが目に見えて減ってきていることもあり、「逆張り」が好きな私としては、とてもおあつらえ向きの風が吹いているのが、ここニューヨークと言えるでしょう。

まだ参入余地があるスタートアップ・アクセラレーター分野でニューヨークに参入し、ビジネス的に結び付きが弱くなっている日本企業との接点となることができれば、私が過去20年ほど積んできた起業や日米での勤務経験が生かせる。そんな思いでFabFoundry社をニューヨークに根付かせるための現地での活動に加えて、日本との連携を深めるための動きを並行して進めています。

つづきます。


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